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30代後半の忘備録です。

【35】夜が明ける

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夜が明ける【電子書籍】[ 西加奈子 ]
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西加奈子

 

ごくごく平凡な高校生の主人公が、深澤暁と出会う。

彼の風貌は日本人離れし、美しいとは言えないものだが、フィンランド人の映画俳優アキ・マケライネンと瓜二つだ。

デザイナーの父親の影響でマイナー映画にも詳しい主人公は暁に話しかける。

「君はアキ・マケライネンだ」

暁はシングルマザーの母親からネグレクトされてきた。

その容姿が原因でいじめにあってきた。

そんなことから、吃音ももっていた。

しかし主人公の一言で人生は開けていく。

自分ではない誰かになり、そこに心の平穏を求めていくのだ。

それはいつしか魔法や憧れを超え、人生となっていく。

アキは劇団員となり、理不尽と対峙していく。

一方主人公も。高校在学中に生活が一変する。

父親が借金を残して自死する。

そこから始まる人生の理不尽。

お金がないということは、健康な心と体を蝕む。

だけど若いうちはいい。夢を盾に抗えるから。

しかし。

人の役に立ちたい思いでマスコミ関係に入社。

しかしそこからさらに人生は無情を突きつけてくる。

パワハラセクハラ、あらゆるハラスメントに耐えた結果、得たものはぼろぼろの心と体、貧困。

 

そんなストーリーになぞって出てくる人物があらゆる闇の象徴として描かれ、希望が何一つ見えない。

ただただ苦しくて、しかし、引き込まれて小説を読んでいることを忘れる不思議な一冊だった。

すごい、小説だった。

 

最後、少しだけ「夜が明ける」。

負けていいんだ。

勝ち負けじゃないんだ。

 

でも現実は綺麗事じゃないんだ。

こんな世の中だ、明日は我が身。

 

人に勧めたくなる一冊でした。