有名な本だけれど、初めて読んだ。ずっと読もう読もうとタイトルを冷蔵庫に貼ってあった。
小6の夏、3人組の1人が祖母の葬儀を経験する。
死体を見たい好奇心が湧いた2人の仲間。街の中のある一軒家に一人暮らしのおじいさんがいる。そのおじいさんが亡くなるのを見届けようと計画するところから話は始まる。
様々な角度から生を描き、いろいろな死にも読者を向き合わせる。
テーマについてはもちろん考えるところはあるけれど、もう戻らないあの眩しくて特別な夏が描かれていて、夏って何であんなに特別なんだろうって胸がいっぱいになった。あぁ、あの夏の感じ。朝顔の色水。熟れたスイカ。蚊取り線香の香り。子供は地面と近いから、むっとした太陽に照らされたアスファルトや土の温度。聞こえてきそうな蝉の声。
そのみずみずしさと対比されたおじいさんの生活。初めはただそこで死を待つだけだったおじいさんも、子供達の生や見ながら好奇心をぶつけられてみるみるげんきになる。人を待つ喜びや関わる喜びを思い出す様に胸が熱くなる。
戦争や結婚の話で、こどもたちも「おじいさん」ではなく、1人の人であることに気付き、お好み焼き屋での大人同士のやりとりを見てそれが確信となる。おじいさんにはおじいさんにしかない味や個性、愛や人生があって、彼らはおじいさんその人が大好きになる。彼らにとってかけがえのない人となる。
ラストはやっぱり亡くなってしまうけど、ぶどうを買うおじいさん、ぶどうを洗うおじいさん、彼らを待つおじいさんを思い描くと、きゅっと目頭が熱くなる。おじいさんもみんなのこと大好きだったよってわかってるといいな。おじいさんには伝わってたかな?
ここが、言葉にされていないところがまたミソであると思う。
人は死ぬと分かっていても、それを明日明後日のことと思わない。だから大切なことは言葉にしない。そして、かならずそれを後悔する。彼らは後悔などしていないだろうか。あの世に友達がいるって思える柔軟性が素敵だと思う。
読んでみてよかったなって思った。