読書感想文など

30代後半の忘備録です。

【18】東電OL殺人事件

佐野眞一

 

東電OL殺人事件をジャーナリストの佐野眞一氏が取材したものなのだけれど、

必要な描写以外のことや主観的な描写や佐野氏の心情や妄想に多くのページが割かれている。

そのため読んでいてげんなりする。

センセーショナルで人の興味を多分に引く事件だったのだなぁということだけは読み取れる。

しかし、結果的に助けたゴビンダ氏にも被害者にもあまりリスペクトを感じない内容のため、

特におすすめはできないかな、という感じ。

【17】西の魔女が死んだ

梨木香歩

 

とても有名なこの本を、初めて読んだ。

風の時代と言われる今、この本に出てくるおばあちゃんとまいの生活に、多くの人が憧れ、

背中を押されるのではないか。

そして、まいの父と母の姿に自分を重ねる大人は、「仕方がないよね」、「みんなそうよね」、「だって…」と自分を赦すのではないか。

そして、まいに共感するすべての人が、

まいの行いや周りの大人の関わりに救いを得て、

どう生きるか大なり小なり考えるのではないかと感じた。

 

"いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です。"

 

物語が進み始めた頃にでてくる、おばあちゃんの言葉。

今の時代を生きる私たちをハッとさせる言葉だと思う。

分かっているけれど、どれだけの人が実践しているのか。

そして、大人は子供にこれを求める。

 

 

不便な暮らしが美しく映る。

ラベンダーの茂みに干されたシーツの贅沢な香り。

丁寧に暮らすおばあちゃんの生活。

オールドファッションだがむしろ新しくて必要な生き方。

あとがきにあったように、大地に裸足で立ち、

大地から繁茂する草花に触れる生き方。

卵がまだ温かい経験。

この暮らしは、勇気が必要だと思う。

雄鶏が果敢に闘ったであろう。

雌鶏を守ろうとしたろう、そんなまいの感受性や想像力の描写にも胸が詰まった。

 

誰かからの評価や考えに左右された価値観でものを語る父親と、「自分の意思」を大切にするおばあちゃんを退避して複雑さを感じるまいの混乱を読み取った。

でも、それを「いつだってそのときの自分に正直なんですよ」と笑えるおばあちゃんのおおらかさに、そんな器になりたいという憧れを抱く。

 

心にしまいたいことばたち

"上等の魔女は外からの刺激には決して動揺しません"

 

"大事なことは、今更究明しても取り返しようもない事実ではなくて、いま、現在のまいの心が、疑惑とか憎悪とかいったもので支配されつつあるということなのです"

【14】wonder

R・J・パラシオ

 

遺伝子の疾患で顔の骨の形成不全や一部欠損で生まれてきたオーガストが、10歳にして初めて学校に通い、

差別や誤解、偏見、いじめを受けて悩みながらも

それに抗う本人の強さや周囲の温かさによって

自分の生活を拓いていく物語。

本人、家族はもちろんだが、学校の中のいわば他人が成長する点に心が動く。

 

わたしもオーガストのような疾患の方とお会いしたことがある。

外耳の形成不全と、何より顔が「普通」でない。

閉まらない瞼。

分厚すぎるくちびる。

鼻はもう覚えていない。

覚えられるほどご本人の姿をまじまじと見ていなかったのだろうなと今は思う。

身長も極端に低かった。

 

 

わたしは、ハロウィンの日に、ジャックの陰口を聞いてしまったオーガストのシーンに胸を抉られた。

そこで本を読むのをやめてしまいたかった。

多分、映画で観たことが無かったらその先の辛い出来事を勝手に想像して辞めていたかもしれない。

 

 

ここで大事なのは、差別や誤解を弾糾することではないのかな、と思う。

 

オーガストに対する視線はや感情は当然あってしまうものなのではないか。

実の姉も、それを嫌悪していたにも関わらず

自分の中にもオーガストを見るその他大勢と同じ考えや感じやがあることに気付いてしまうシーンがある。

 

大切なのは、その人とどう関わるかだ。

関わりたくない

そう思ったときに、ある種の特別扱いや、過激に排除しないことが大切だと思う。

 

わたしの娘の担任も言っていた。

「思いやり」が大切だろうと思う。

相手にはなれないし、相手の気持ちはわからないけど、

想像してみることだ。

「わたしは積極的には関わらないが、必要とあらば関わる気持ちや姿勢をもっている。」

それだけで良いのではないだろうか。

一つ上の感情として

「理解したいと思っている」

という気持ちで接してみるのはどうだろう。

 

そんなときに邪魔になるのが

他人の目線だ。

そんな自分のことを他人がどう思うか。

偽善者だと言われないか。

明日から自分が仲間外れにならないか。

変わり者だと笑われないか。

そんなことを考えてしまわないだろうか。

 

あなたは、相手を理解しようと努める人のことを

そんなふうに思うか。

 

さて、話はまとまらないけれど、

単純に物語として面白く、感動でうるうるするシーンもある。

視点が変わってオーガストに関わる人々の気持ちの描写て、新しい視点を得ることもあるだろう。

ぜひ、まだ読んだことのない人は児童書と侮らず読んで欲しいし、

映画『ワンダー 君は太陽』を観てみて欲しい。

【13】夏の庭

湯本香樹実

 

有名な本だけれど、初めて読んだ。ずっと読もう読もうとタイトルを冷蔵庫に貼ってあった。

 

小6の夏、3人組の1人が祖母の葬儀を経験する。

死体を見たい好奇心が湧いた2人の仲間。街の中のある一軒家に一人暮らしのおじいさんがいる。そのおじいさんが亡くなるのを見届けようと計画するところから話は始まる。

 

様々な角度から生を描き、いろいろな死にも読者を向き合わせる。

 

テーマについてはもちろん考えるところはあるけれど、もう戻らないあの眩しくて特別な夏が描かれていて、夏って何であんなに特別なんだろうって胸がいっぱいになった。あぁ、あの夏の感じ。朝顔の色水。熟れたスイカ蚊取り線香の香り。子供は地面と近いから、むっとした太陽に照らされたアスファルトや土の温度。聞こえてきそうな蝉の声。

そのみずみずしさと対比されたおじいさんの生活。初めはただそこで死を待つだけだったおじいさんも、子供達の生や見ながら好奇心をぶつけられてみるみるげんきになる。人を待つ喜びや関わる喜びを思い出す様に胸が熱くなる。

戦争や結婚の話で、こどもたちも「おじいさん」ではなく、1人の人であることに気付き、お好み焼き屋での大人同士のやりとりを見てそれが確信となる。おじいさんにはおじいさんにしかない味や個性、愛や人生があって、彼らはおじいさんその人が大好きになる。彼らにとってかけがえのない人となる。

 

ラストはやっぱり亡くなってしまうけど、ぶどうを買うおじいさん、ぶどうを洗うおじいさん、彼らを待つおじいさんを思い描くと、きゅっと目頭が熱くなる。おじいさんもみんなのこと大好きだったよってわかってるといいな。おじいさんには伝わってたかな?

ここが、言葉にされていないところがまたミソであると思う。

 

人は死ぬと分かっていても、それを明日明後日のことと思わない。だから大切なことは言葉にしない。そして、かならずそれを後悔する。彼らは後悔などしていないだろうか。あの世に友達がいるって思える柔軟性が素敵だと思う。

 

 

 

読んでみてよかったなって思った。

 

 

【12】相手の身になる練習

鎌田實

 

自分を大切にすることと、自分本位なことは違う。

この言葉の違いが分かるように人を育むには、経験や体験が不可欠だと思う。

どんな時間でもスマホがあれば自分の好きなことだけに目を向けられる時代だからこそ、常に人との関わりの中で生きていくのが人間なんだよってわざわざ伝える必要があるのかな、と思った。

人がいることに気づかなければ相手の身になることすらできない。現在、働いても賃金が上がらない経済状況の日本で生きがいを見つけるには、人の役に立っている実感を得ることがひとつだろうと思う。

 

わたしの昭和16年生まれの祖母は12人きょうだい。母親から何かしてもらった記憶はないそうだ。今なら「お子さんと向き合ってください。将来愛着障害になりますよ」と言われてしまうかもしれない。でも、祖母の兄妹は誰1人としてそういう類の特性の人はいない。昔の人は兄弟が多い家庭がたくさんだったろうけど、愛着障害に当てはまる人は今ほどいたろうか?

祖母の時代は子供の頃から役割があったのだと思う。忙しく、モノが十分でない時代。子供も労働力だった。家族が支え合っていた。自分の役割=居場所としてもっていた。

今との違いはそれかも?今は暇な時間が多い。テレビを観たり、スマホをしたり。自分の役割を子どもが持たず、自分の居場所を見出しにくいのかな?人との関係がもちにくい。家族にとって自分は何なんだろうって子どもながらに思っちゃうとか。

いや、知らんけど。

 

わからないけど、そんなことを考えたよ。

 

 

【11】こころの対話 25のルール

伊藤守

 

どうしても「説明しよう」「わかりやすく伝えよう」と思ってくどくどこちらの言い分を語りすぎるなぁと反省。

この本を読むたびに反省するのだけれど、全然できるようになっていないよ。もー。

定期的に読み返して潜在意識に叩き込んだり、トレーニングしたりするしかないのかな。

書く瞑想とも似たことが書かれていて、自分とのコミュニケーションが大切だということだった。

 

相手の話を聞くことっていうのは、一語一句を覚えているのではなく、共感すること。相手に投げたボール(ことば)は相手から返ってきて、再び投げ返したところまで。

 

相手を信頼することと、安心してもらうこと。

無視されることはとても寂しいということ。

至極当たり前のことなんだけど、難しいんだよなぁ。

相手に寄り添うぞ、って気持ち、聞くと決めたら一切口を挟まないということ。

今日からがんばるぞ。あと、書く瞑想もちゃんとやりたいな💦

 

人間関係に悩んだり、相手のことを慮る余裕のある年齢になったりしたときに読むといいのかな。人生豊かになりそう。