読書感想文など

30代後半の忘備録です。

【5】異彩を、放て。

松田崇弥

松田文登

 

ヘラルボニーと出会ったのは2019年の池袋でのポップアップストア。

その頃、SDGsという言葉が広まり始めていて、

自分の仕事とも切り離せない分野でもあり、さまざまなSDGs関連のプロダクトを紹介するそのポップアップに別のブランド目的で訪れた。

そこで出会ったのは知的障害者の作品をハンカチにした商品。

価格は2500円+税。

それを見るまで、わたしは知的障害のアートは各福祉施設の作業製品止まりであるという認識で、ハンカチならせいぜい500円とか。まぁ、刺繍されているものなら1000円くらいで「高いな」というイメージのものだった。

でも、それは違う。

プリントされた綿のハンカチが百貨店で2500円。

わたしは思わず惹きつけられ、2枚購入した。

知的障害のある方の力が、こんなふうに価値のあるものとして認められていることが嬉しくて。

1枚は友達へ。もう1枚は自分用に購入した。

 

そのあと、ヘラルボニーのプロダクトは成田空港第3ターミナルを彩るようになった。

ジェットスターやピーチ、スプリングジャパンを利用する人々が「なんだこれ?」と興味をもつような圧倒的なアートとして飾られていた。

わたしはそのときすでにヘラルボニーを知っていたので、福祉分野がこのように風景をジャックしている様が嬉しくて、興奮した。

一緒に旅をした友達も、「これ、ヘラルボニーだね」と気付いてくれたことも嬉しかった。

 

あれからヘラルボニーは飛躍的に大きなブランドとなった。ディズニーやJALベルメゾンなどとのコラボもあり、展覧会も多数開かれ、SDGsという流れもあり、どんどん知られたものになってきているように思う。

 

そして、2023年夏、どうしても行きたかったマザリウムへわたしは出かけた。

洗練されたロビー、アートルームの世界観。

アートルームではベッド、チェア、ロールスクリーンまでもが八重樫道代さんの作品がデザインされている。

「かっこいい。」

障害者がかっこいい。

素直にそう感じた。

 

この本はそんなヘラルボニーの理念や歩みを知ることができる。知的障害者との関わりをもつ人はこの本に泣かされると思う。

そして、次の課題を考えることになると思う。

全ていっぺんには解決していかない。

きっと松田兄弟は次の課題に向けてプロダクトを考えておられることと思う。

そして、ヘラルボニーに感化された誰かが後に続くだろう。

まずは存在を知ってもらうことこそ大切だ。

わたしは、今はビジネスとは違う立場から障害者と関わり、その方々の人生に関わらせていただいているけれど、まだまだ十分に理解されていない分野だと思う。わたしの立場から問うとしたら、

軽度知的障害の方は何ができて何が難しいのか知ってる?

生活介護施設に通所する方々の生活の流れを知ってる?

車椅子の方の就職が難しいの知ってる?

障害者雇用にある職種ってどんなものか知ってる?

知的障害者が将来の夢を語るときの目の輝きを知ってる?

夢を諦めざるを得ない現実に気付いた時の涙を見たことがある?

障害者手帳が大きくて財布に入れられなくて、濡れるとぐちゃぐちゃになっちゃう不便さをどう思う?(これは最近アプリもある)

パッと思いつくだけでもこんな感じだ。

わたしはいろんな人に知って欲しい。綺麗事じゃどうにもならない現実もみんなで考えられたらいい。みんな得意分野があって、視点が違うからみんなで考えればたくさんのアイディアが生まれると思う。

社会に伝える手段や機会がなかなかもてない人たちの代わりに、考えられる人たちで考えていくことが理想的だと思う。

 

本当に新しい視点があって、めっちゃいい本。

わたしがことあるごとに押し付けがましく人に貸したり差し上げたりしてる本なので、ぜひ読んでみて欲しい。